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彫刻

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梨子地山水花鳥蒔絵硯箱(なしじさんすいかちょうまきえすずりばこ)

梨子地山水花鳥蒔絵硯箱
なしじさんすいかちょうまきえすずりばこ
江戸時代
 蓋表には、梨子地に格狭間(こうざま)形の窓二つを重ねる。一方は、芝垣や菊・桔梗・藤袴・薄などの秋草、雲間に覗く銀の望月を表した秋の景。他方は、波高い海辺の、遠景には屈曲する広葉樹の間に一の苫屋を構え、近景には小岩の影に蒲公英の花を咲かせる、春の景である。その花には銀と銅との金貝を用いるなど、細やかな気遣い。

 蓋裏・身底は、連続する図柄の水辺の小景。細かな漣が立つ汀に、沢潟などの水草が茂る。蓋裏では二羽の雁が、一は鳴き声を上げ、他は貝を啄む。身底では、更に一羽の雁が舞い降りようと上方から滑空する。

 何れも、歌絵の伝統を通じて洗練された、親しみやすい小景を表す。蒔絵の描き出す優美で繊細な黄金の輝きで、調度に静かな重厚感を与えている。

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