所蔵品

絵画

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堀江物語絵巻(ほりえものがたりえまき)

岩佐又兵衛
いわさまたべえ
堀江物語絵巻
ほりえものがたりえまき
紙本着色 三巻
 室町時代に作られた御伽草子の仇討物に属する「堀江物語」。その古浄瑠璃の正本を絵巻化したものである。当初は15〜20巻に及ぶ長大な絵巻であったとされ、香雪美術館本の三巻以外にも、他に数巻の残欠の所在が知られる。図様には13世紀の「平治物語絵巻」からの転用が指摘され、中世の絵巻の伝統を継承する画風も見られる。一方で、物語の推移していく内容を丹念にたどりつつ、登場人物の葛藤や心理的な変化を視覚的に展開させて、血生臭い殺戮場面の精彩に富んだ描写などは、従来の絵巻になかった要素である。人物の風姿には、同時代の風俗画に通じる官能美や嗜虐性も漂う。岩佐又兵衛勝以(1578-1650)と、その工房により制作されたものである。中世以来の絵巻の系譜に、又兵衛の異色に富んだ個性が、時代を画する新風を吹き込んでいる。近世大名家による調度本の受容の高まりを背景に作られた、豪華な絵巻である。

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