稚児大師像(ちごだいしぞう)
重要文化財 稚児大師像 ちごだいしぞう 絹本着色 一幅 鎌倉時代 |
童子姿の弘法大師空海が合掌する。空海は幼名を真魚といった。生れながら合掌していたといい、2・3歳で既に経文や陀羅尼を読誦し、12歳にして三界の大導師に成ろうと志したと伝える。本作は、空海、幼時よりの求道の精神を表出したものと想像し得る。釈尊に誕生仏があり、聖徳太子に二歳像があるのと軌を一にする童形大師像である。 本作は、ふっくらとした顔、朱の口唇や少しだけ覗く耳、愛らしい小菊文様の上衣を着ける、あどけない幼児の姿である。切り揃えた髪の毛・蓮台の蓮弁の描写に、繊細な筆致が窺える。宗教画というよりも一人の子供の肖像を思わせる。しかし、華麗な蓮華座上に端坐する姿は崇高で、しかも芸術性に満ちている。円相の輪郭に截金(きりかね)が施され、なかの童子像がいっそう映えて美しい。 |
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